オマージュの形骸

ハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』を観察してきた。

不本意な映画体験になった。

ある意味、話題の映画だ。

 

できるだけ手短に感想を述べる。

押井版『攻殻』への熱烈なオマージュにあふれた映像になっていたが、肝心のお話の内容は、といえば随分と矮小化されたものに堕していた。

まあ、国際的な映画市場で多くの観客に容易に訴えられるように、と

  1. 復讐劇
  2. 母子関係
  3. 引き裂かれた恋人

のように「わかりやすい」プロットの三題噺にしたんだろうが、原作ファンとしてはゲンナリするものであった。それは押井版の陰鬱さが前景化した『異質な世界』であったからだ。ヴィジュアルもゴテゴテしている割りに安っぽい。物語のレヴェルも『水戸黄門』か『太陽に吠えろ!』を意識させるものだった。

 

自宅に帰ってから原作第 1 巻を読み直した。

成る程、『あの世界』をいろいろと想起してくる。

だが、あの理不尽で不条理な「現実的世界」を描いていても、士郎正宗本人の『攻殻』にはなにかしら陽性の、未来への希望やこの《世界》への哲学といったものがあるのだった。

 

私自身も映画監督を目指していた時期がある。

そして『イノセンス』という偽名の付いた賢しらな映画を作り出した制作会社に在籍していて、精神を壊された。あの映画の公開時に石川社長自身が言っていたことだが、イノセンスは『実録プロダクション I.G.』であり「狂っている」のである。あのプロダクションの中に『9課』に憧れる連中は大勢居たが、実際は wanna-be なだけのチンピラやテロリストしか居なかった訳であって、内ゲバが横行していた。個人的に『地獄幼稚園』と呼ぶことにしている。

 

押井版攻殻とは、原作への冒涜、と断じる。

その押井版へのオマージュにあふれた本作品は、残念ながら唾棄に値する焼き直しであった。

 

映画ってなんだろう?

物語ってなんだろう?

人生ってなんだろう?

宇宙ってなんだろう?

 

紆余曲折の末、わたしはわたしなりの回答を得た。

だが、それを世に問う機会が来るのか来ないのかは神のみぞ知る、というよりは、なりゆき任せである。

 

 

余談:

学生時代からの趣味もあって、個人的にはこういう映画の suggest するものに、より大きな未来を感じている。


『ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古』映画オリジナル予告編